こんにちは。「都会のはしっこ、2LDKで育ててます。」の管理人です。
技術の進化、ちょっと気になる話題、最新の研究成果――
日々の情報の波にさらされながら、「これ、ちゃんと追いたいな」と思っても、そのまま流れてしまうこと、ありませんか?
この「キニナル話」では、そんなトピックを自分用に整理しつつ、誰かの参考にもなればと思いながら、
ちょっと立ち止まって読んでみるシリーズです。
仕事では生成AIを使用することが増えたので、一発目の記事は生成AI関連の論文になります。
今日のキニナル論文
Prompt Engineering for Requirements Engineering: A Literature Review and Roadmap
arXiv:2507.07682 (2025年7月公開)
ここから:生成AIによる要約
この論文は、プロンプトエンジニアリング(PE)がソフトウェア開発の上流工程である要求工学(Requirements Engineering, RE)にどう適用されているかを体系的に整理した初のスコーピングレビュー論文です。
🔍 背景とねらい
REは、ソフトウェアに「どんな機能が必要か」「なぜそれが必要か」を定義するフェーズであり、失敗すればプロジェクト全体に影響します。自然言語ベースで行われるため、大規模言語モデル(LLM)との親和性が高い分野とされます。
本論文では、2021年から2023年末までの23件の研究を精査し、PEがREにどのように使われているかを調査。さらに、今後の研究開発に向けた課題とロードマップを提示しています。
🧪 現在の研究トレンド(23本の文献分析より)
対象となったREタスクは以下の4種:
| タスク分類 | 具体的な活用例 |
|---|---|
| 要求抽出 | インタビュー記録・仕様書からの機能要件抽出 |
| 要求分類 | 機能/非機能の分類、自動ラベリング |
| ユーザーストーリー生成 | 既存要件を自然言語で再構成、ChatGPTによる自動生成 |
| トレーサビリティ | コードと要求間の対応関係を自動検出・提示 |
分析からは、ほとんどの研究が生成AI(GPT-3.5/4, Claudeなど)をそのまま利用しており、独自モデルの構築は稀。成果の多くが、プロンプトの工夫に依存していることがわかりました。
⚠️ 現状の課題:なぜこの分野はまだ“未成熟”なのか?
本論文では、RE × PE の研究がまだ分散的・初期段階であることを明らかにし、以下の3点を主要課題として挙げています:
プロンプトの設計手法が場当たり的
成功例はあっても、再現性のある「なぜうまくいったか」が体系化されていない評価指標の不足と比較困難性
生成結果の“良さ”を測る基準が曖昧で、他研究と比較も困難人間との役割分担が未設計
AIに何を任せ、どこで人が介入すべきかが考慮されていない(=Human-in-the-Loopの視点が弱い)
🛠 提案されるロードマップ:今後の3ステップ
著者らは、今後この分野を発展させるために、以下のような3段階のロードマップを示しています:
プロンプト設計の標準化と知識化
→ タスクごとの「よく効くプロンプト」のパターンや原則を明示人間との協調設計の導入
→ 生成AIの結果に対する人のフィードバックをシステムに反映する設計思想へ評価とベンチマークの整備
→ 成果物の正確性・再現性・実用性を測る基準を確立し、他手法と比較可能に
📌 論文としての意義
この研究の価値は、個別の技術成果ではなく、散在していたRE × PEの研究を俯瞰して整理した初のまとまったレビューである点にあります。
まだ成熟していない分野だからこそ、研究者・実務者が「どこから手をつければよいか」の道しるべとして機能する構成になっています。
ここまで:生成AIによる要約
一言初見:「仕様書を書く前に、AIと話す」時代
コードを生成するAIよりも、「何を作るか」を考えるAIとの対話が求められるようになってきた印象です。
この論文は、そうした時代の入口にある技術の可能性と、まだ手探りな現在地を丁寧に示していました。
プロンプトエンジニアリングの“設計力”が問われるのは、これからかもしれません。