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【ワールドトピックス】世界最古のカフェと石鹸の街?シリアの日常に息づく数千年の記憶

こんにちは。「都会のはしっこ、2LDKで育ててます。」の管理人です。

本日は、読売KODOMO新聞のワールドトピックス深掘りシリーズの第11弾です。

前回の記事では、リトアニア共和国の「十字架の丘」から、人々の静かな祈りと信念の強さについて考えました。 これまでの記事はこちらです。

2026年1月8日号の読売KODOMO新聞で紹介されていたのは「シリア・アラブ共和国」です。

シリアと聞いて、今の私たちが真っ先に思い浮かべるのは、どうしても「内戦」や「不安定な情勢」という言葉かもしれません。 ニュースの映像で流れる、崩れた建物の景色がシリアのすべてだと思い込んでしまいがちです。

でも、歴史の教科書を少しめくれば、そこには人類が文明を築き始めた頃からの長い長い物語が眠っていることに気づきます。

知らない国を「自分ごと」にする連載。

今回は、この「シリア」という国の輪郭を、今の喧騒の裏側にずっとあり続ける、記憶のフックになりそうな特徴ではっきりさせてみたいと思います。



この記事の3行まとめ

  • 中東の要所に位置し、日本の約半分ほどの面積に約2,300万人が暮らす国
  • 世界最古の居住都市ダマスカスがあり、千年以上続く製法の石鹸が今も作られている
  • アルファベットの起源となる文字が生まれ、豊かな食文化が人々の交流を支えている

国の基本情報

まずは、基本データから。

シリア・アラブ共和国

首都はダマスカスです。


Wikipediaより

  • 成り立ち: 1946年にフランスから独立しました。現代の国家としての歴史は100年に満たないものですが、この土地に刻まれた歴史はそれとは比較にならないほど長いです。

独立後の歴史以上に、この土地が歩んできた数千年の時間が、今のシリアの人々のプライドや暮らしの作法を作っているような気がします。 では、具体的にどんな「フック」があるのか見ていきましょう。

記憶に残る“フック”になる特徴

数千年前から「今日」が途切れず続いている街

最初のフックは「世界最古の居住都市」という点です。

首都のダマスカスは、紀元前数千年から現在まで、一度も途絶えることなく人が住み続けている世界でも稀な都市として、ユネスコ世界遺産にも登録されています。 「世界最古」をうたう遺跡は他にもありますが、すごいのは「一度も無人にならずに、ずっと誰かが生活し続けている」という点です。 戦争や王朝の交代があっても、そこには常に誰かの暮らしがあり、今日までバトンが繋がってきたということですね。

資料や映像で旧市街の様子を見てみると、そこには車も通れないような迷路のような路地が広がっています。 高い石壁に挟まれた細い道を歩く人々の背景には、何千年も積み重なった石畳があるわけです。

そんな歴史の塊のような街で、人々の暮らしの拠点となっているのが「カフェ」だという記述を多く見かけました。

例えば、有名な「ナウファラ」というカフェ。 調べてみると、ここは単にお茶を飲んで休憩する場所ではないようです。 シリアの人々にとって、そこは「物語を共有する広場」のような役割を果たしてきました。

特に興味深いのが「ハカワティ」と呼ばれる伝統的な語り部の存在です。 資料によると、剣を手に、高い椅子に座った語り部が、英雄たちの古い物語を身振り手振りで読み聞かせるといいます。 周りのお客さんは、水タバコの煙をくゆらせ、小さなグラスに入ったすごく甘い紅茶をすすりながら、その話に聞き入る。 良い場面では拍手が起き、時には野次が飛ぶ。

テレビやインターネットが普及するずっと前から、この街の人たちはこうして集まり、同じ話を聞いて笑ったり怒ったりしてきたのだそうです。

数千年の歴史を持つ石畳の上で、今日も誰かが隣の人とチェスを楽しみ、昨日の出来事を話し込んでいる。 シリアという国を「不安定な場所」というニュースの断片だけで判断するのは、こうしたタフな日常の継続を見落としてしまうことなのかもしれません。

数千年の香りを閉じ込める「アレッポの石鹸」

2つ目のフックは「アレッポの石鹸」です。

Wikipediaより

シリア北部の都市アレッポ。 ここもまた、非常に古い歴史を持つ街ですが、世界的に有名なのが「石鹸」です。 日本でも雑貨店などで見かける、あの茶色くて大きな塊。 切ってみると中が鮮やかなエメラルドグリーンをしている、あの石鹸のルーツです。

この石鹸の製法を調べてみると、千年以上にわたってほとんど変わっていないという事実に驚かされます。 主原料はオリーブオイルと、ローレル(月桂樹)のオイル。 大きな釜でグツグツと煮込まれた液体は、床一面に広げられ、職人たちが足に板を履いてその上を歩きながら平らにならしていくのだそうです。

特に印象的なのは、その後の乾燥工程です。 カットされた石鹸は、通気性を良くするために、まるでレンガを積み上げるようにして高く積み上げられます。 石鹸の塔が並ぶ風景は、アレッポの冬の風物詩として知られていました。

乾燥には1年以上の歳月をかけるそうです。 外側は酸化して茶色くなりますが、中にはオリーブの成分がぎゅっと閉じ込められている。 この石鹸は、シリアの人々にとっての大切な地場産業であり、文化の象徴でもあります。

内戦によって多くの工場が被害を受けたというニュースもありましたが、職人たちは別の場所に移っても、あるいはガレキの中で釜を修復してでも、石鹸作りを続けようとしたというエピソードを見かけました。 彼らにとって石鹸を作ることは、自分たちのアイデンティティを守ることと同義だったのかもしれません。

アルファベットの先祖が眠る場所

最後のフックは「文字の起源」です。

私たちが今、当たり前のように使っているアルファベット。 その源流の一つが、シリアの北西部にあった古代都市ウガリットにあるという説を調べてみました。 ウガリット文字は、紀元前14世紀頃に発明された、世界最古のアルファベットの一つとされています。

それまでの文字(楔形文字など)は、覚えるべき文字数が数百から数千もあり、一部の特権階級しか使えない非常に難しいものでした。 しかし、ウガリットの人々はそれをわずか30個ほどの記号に整理しました。 「音」を記号にする、という画期的な発明です。

これによって、多くの人が文字を扱えるようになり、商売や記録が飛躍的に効率化されました。 このシステムがフェニキア人に伝わり、ギリシャ、ローマへと渡って、今のアルファベットになったと言われています。

シリアの国立博物館には、小指ほどの小さな粘土板が展示されているそうです。 そこには、世界で初めて並べられた「ABC」の原型が刻まれています。

まとめ:この国から感じたこと

シリア・アラブ共和国

調べる前は、ニュースで流れる破壊された街並みや、厳しい表情の避難民といった、ぼんやりとした「内戦下の国」という記号でしかなかった国。

しかし、記憶に残りそうな特徴をフックに調査してみると、

「世界で最も古くから人が住み続け、物語を語り継ぐ場所がある」 「千年前と変わらぬ製法で、時間をかけて石鹸を育てる職人がいる」 「現代の私たちが使う文字のシステムを生み出した文明の故郷である」

として、少しだけ輪郭がはっきりしました。

シリアの人々を知る専門家や旅行者の手記を読んでみると、彼らは非常に「もてなしの精神(ホスピタリティ)」が強いことで知られているそうです。 見知らぬ旅人であっても、家に招き入れ、ありったけの料理を並べて歓迎する。 その精神は、何千年もの間、様々な民族や文化が交差してきたこの土地で、生き抜くために育まれた知恵なのかもしれません。

今、私たちがニュースで見るシリアは、長い歴史のほんの一瞬の、痛ましい断片です。 その背後には、オリーブの木が揺れ、甘いお菓子を囲み、家族や友人と語らう豊かな日常が、ずっと存在してきました。

子どもと一緒に、地図帳のシリアのページを開きながら、 「私たちが使っているAやBという文字は、もしかしたらこの国から始まったのかもしれないね」 と話してみる。 あるいは、アレッポの石鹸を一緒に使ってみる。

そんな小さなきっかけが、ニュースの向こう側にいる人々を、自分たちと同じように暮らしを慈しむ「人間」として想像し直す一歩になるのではないでしょうか。

世界を知ることは、自分たちの足元がどこに繋がっているかを確認することでもある。 そんな風に感じた調査でした。

ではでは。